昨今、Facebookが積極的に利用を推奨しているコンバージョンAPI。
コンバージョンAPIとは何なのか、なぜこの機能を使うべきなのか、どうやって導入するのかをご説明していきます。
コンバージョンAPIとは
iOSのITPによる3rd party Cookieと1st party Cookieの制限や2023年後半に予定しているChromeの3rd party Cookieのサポート終了など、Cookieの利用がどんどんと制限されています。
これまでデジタル広告においてCookieは効果測定の土台となっていました。
その土台が揺らぐことで正しく広告効果が把握できなくなるのはもちろんのこと、そのデータを活用した広告配信にも影響が出てきます。
そういった環境下でCookieを使用しない効果測定方法としてFacebookが推奨しているのが、コンバージョンAPIです。
これまでFacebook広告のピクセルタグでCookieを使用して取得していたデータを、広告主自身のサーバーからFacebookへデータ送信することでCookie制限の影響を受けない仕組みとなっています。
■ピクセルによるCookieを利用した計測
■コンバージョンAPIを利用した計測
コンバージョンAPIの導入方法
FacebookのコンバージョンAPIの実装にあたっては、まずどのような方法で実装するかを検討します。
冒頭で申し上げた通り、コンバージョンAPIとは主に広告主のサーバーからFacebookへデータ送信する仕組みです。
そのためサーバー環境に手を入れる必要があり、使用されているカートシステムなどによってはそもそも開発ができない場合もあります。
実装方法について
実装方法としては主に以下の3点です。
- 自社で開発を行い実装する
- コンバージョンAPIに対応したパートナー統合を利用する
- Googleタグマネージャー(サーバーサイドコンテナ)を利用する
詳細は後述しますが、自社で使用されているサービスがパートナー統合にあれば、その機能を活用してコンバージョンAPIを導入することが最もスムーズでしょう。
パートナー統合を利用できない場合は自社で開発を行う、エンジニアリソースを使用できない場合はGoogleタグマネージャー(サーバーサイドコンテナ)を利用した実装を検討します。
自社で開発を行い実装する
自社のエンジニアや開発を委託しているパートナー企業で自社サーバーからFacebookへデータ送信する仕組みを構築します。
■開発範囲
コンバージョンAPIの開発者向けドキュメントは以下になりますので、詳細をご確認ください。
コンバージョンAPI – マーケティングAPI
また弊社では、パートナー統合を使用できない広告主様がFacebook広告のコンバージョンAPIをより簡単に実装可能にするサービス「Boyciana」を提供しています。
自社での開発が難しい広告主様、また不定期で発生するFacebook側の仕様変更への対応を懸念される広告主様はぜひ一度お問い合わせいただければと思います。
※代理店様へのサービス提供も行っています
コンバージョンAPIに対応したパートナー統合を利用する
パートナー統合リストにあるサービスを利用されている広告主様は、ほぼFacebookとパートナーサービスの管理画面上での設定のみでコンバージョンAPIの実装が可能です。
パートナー統合のリストは以下のページよりご確認いただけます。
パートナー統合
ただし上記ページはビジネスマネージャーへのアクセス権限がないと閲覧できないため、権限を現時点でお持ちでない方は以下を参照ください。
ウェブ用パートナー統合について | Facebook Businessヘルプセンター
それぞれのページで掲載されているパートナー数に差がありますが、概ね50前後のパートナーとなっています。
その中でも日本の広告主様が一般的に使用されているであろうパートナー(ShopifyやMakeshopなど)は10以下という印象です。
一方でパートナー統合リストにないサービスでも独自で対応されているサービスもあり、以下は私が発見できたものです。これらのサービスをご利用されている方はサービス提供会社様へ詳細をお問い合わせいただければと思います。
ECプラットフォーム
Googleタグマネージャー(サーバーサイドコンテナ)を利用する
Googleタグマネージャーのサーバーサイドコンテナを利用したコンバージョンAPIの実装もFacebookより正式に案内されています。
参考:Googleタグマネージャ用コンバージョンAPI – マーケティングAPI
こちらを利用することで自社で一から開発するよりもライトに実装可能です。利用にあたってはまずはGoogleタグマネージャーのサーバーサイドコンテナを実装する必要がありますので、以下をご参照ください。
サーバーサイド タグ設定|Google タグ マネージャー – サーバー側
送信する情報について
実装の方法が決まれば、次に整理すべきはどのような情報をコンバージョンAPIを通じてFacebookへ送信するかです。
まずコンバージョンAPIでの必須パラメータは以下になります。
※ウェブサイトイベントの場合。ウェブ以外(電話や実店舗など)はこの限りではありません
- event_name:イベントの名前。標準イベントまたは任意のイベント名を指定
- event_time:イベントが発生した日時(秒単位のUNIXタイムスタンプ。GMT)
- action_source:イベントの発生場所(今回はウェブサイトイベントなので「website」)
- event_source_url:イベントが発生したURL(http://またはhttps://ではじまり、ドメイン認証を行ったドメインと一致している必要あり)
- user_data:イベントを発生させたユーザーの情報(ウェブサイトイベントにおいては下記の「client_user_agent」が必須)
- client_user_agent:イベントを発生させたブラウザのユーザーエージェント
必須パラメータとしては上記の5つですが、Facebookでのマッチング精度を高めるためにできるだけ多くのパラメータを送信することを推奨します。
任意項目の中でも各パラメータの優先度は以下になります。
パラメータ | 優先度 |
---|---|
ハッシュ化されたメールアドレス | 最高 |
クライアントIPアドレス/クライアントユーザーエージェント | 高 |
ハッシュ化された電話番号 | 高 |
FacebookログインID | 中 |
その他のハッシュ化された連絡先情報 (送信できる連絡先には、ハッシュ化されたメールアドレスと電話番号に加え、性別、生年月日、姓、名、市区町村、都道府県、郵便番号、国のハッシュ化されたパラメーターがあります) | 中 |
外部ID | 中 |
ブラウザーID | 中 |
クリックID | 中 |
リードID | 低 |
サブスクリプションID | 低 |
この中でもユーザーのメールアドレス(ハッシュ化したもの)が優先度の最高となっています。
この項目については広告主様内での個人情報保護の観点から十分な検討が必要になるかと思います。
検討の結果、ハッシュ化したメールアドレスであればOKとなり、コンバージョンAPIを通じて送信できれば精度として非常に高まります。
また弊社での実装させていただく際には優先度「中」の「fbc(クリックID」と「fbp(ブラウザーID)」を基本の送信情報に含めています。
重ねてになりますが、送信するパラメータは多ければ多いほどマッチング精度が高まります。
以下が送信できるパラメータの一覧となりますので、ご確認ください。
パラメーター – マーケティングAPI
送信結果
実装が完了したあとの送信結果はピクセルの管理画面上で確認が可能です。
■ピクセルのイベント一覧画面
■イベントのマッチング詳細画面
イベントのマッチングクオリティは上記の場合、10点満点の7.2となっています。
Facebookの推奨スコアは6.0以上となっています。
送信するデータについて調整を行い、6.0以上のスコアを目指しましょう。
参考:コンバージョンAPIのベストプラクティス
コンバージョンAPIの活用方法
ここまでコンバージョンAPIの概要と導入方法についてご説明してきました。
また実装方法や送信する情報についてはウェブサイト上でのイベントにフォーカスしていました。
しかしながらコンバージョンAPIのパラメーターの1つであるaction_sourceの選択肢を見るとわかる通り、送信できるイベントはウェブサイト上のものに限らず、電話や実店舗でのイベントも可能です。
コンバージョンAPIはCookieの利用が制限されてしまった環境下において生まれたもので、今までピクセルタグでできていたものをコンバージョンAPIで補っている状態です。
いわばマイナスをゼロにするためのものですが、それだけで留まっていてはもったいなく、上記のようなウェブサイト以外のイベントも今後積極的に送信していくことで、オフラインでビジネスを行われている広告主にとってよりビジネスゴールに近いデータを活用し、ゼロからプラスにしていくことが可能です。
デジタル広告は数年前と比べて、入札などが手動から自動への流れが強くなり、シンプル化した一方で、計測周りは技術理解と実装によって複雑化していると感じます。
今後も今までできていたことができなくなったり、より複雑化したりということは起きてくるでしょう。
技術によって対応できることは目を背けず対応する、できなくなったことは悔いていても仕方ありません。
手元にある資産の中で最適解を生み出すことが私たちの仕事です。